未確認で進行形で備忘録

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『遊戯王 THE DARKSIDE OF DIMENSIONS』を試写会で見ました

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(ネタバレなし、かも)

 

 映画は宇宙からはじまる。カメラは散在する星々をすり抜けて段々と地球に近づき、大地に根をはり静止軌道を越えてそびえ立つ長大な建造物にフィックスされる。その、例の青い眼の龍みたいに白い建造物が形作っている「KC」という文字。「KC」とは「KAIBA Corporation」!!ということはこの宇宙エレベーターはあの方のもの!!!宇宙はもう社長の領土!!!

 

 『遊戯王』20周年記念の映画最新作にして高橋和希先生製作総指揮による原作の更にその先を描いた正当な続編映画……という前提から想像できるのは、各方面のファンを総じて満足させる祝祭的オールスタームービーという内容だ。何より長い歴史を持つ作品だけに、皆を満足させることだけでも相当にハードルが高いはずだ。しかし……しかし……。

 しかし!!『遊戯王 THE DARKSIDE OF DIMENSIONS』は違った。なんかもうホントに全然違った。そんな次元の代物じゃなかった。なんなんだアレは。誰か教えてくれ。そのために全員見てくれ。

 

 エジプトでの遊戯との決闘(と書いてデュエルと読む)を終えて、アテムは現代の世界から去っていった。それから一年の時が経ち、遊戯たちは高校の卒業を控えている。それぞれの将来を考え、前向きに夢を話す仲間たち。そう、この映画はなにより卒業についての映画だ。高校からの卒業、仲間たちがいる空間からの卒業。そして遊戯にとっては更にアテムのいた時間からの卒業がテーマになる。

 アテムのいた時間との決着という意味ではもう一人、重大な想いを抱えた者がいる。そうだ。社長だ。海馬瀬人だ。

 原作のラストで綺麗な形での別れをとげた遊戯とは逆に、どこか置いていかれた感の残っている海馬は、まだまだアテムにこだわっている。自分に勝ち越したまま目の前から消えて行ったアテムへのこだわりが、今作における海馬の全ての行動の原動力であり、この映画全体の原動力でもあるのだ。そしてそんな社長の常にキレッキレで異常な覇気をともなった一挙一動一投足は、この世界にはもういないアテムに追いつくために必要な、音速も光速も越える速度に至るための準備運動なのだ。なんの誇張でもなく。

 最初に「宇宙はもう社長の領土」って言ったのはあんまり冗談じゃなくて、宇宙エレベーター建造レベルの財力とオーバーテクノロジーと神を素手で喚ぶレベルの意志力をその手にした男がそこまで到達してしまったら、じゃあその次にどこへ向かうか、という問いを勝手に用意して勝手に答えてるのだこの映画は。成層圏越えたらもう光速を越えて○○に至るしかないでしょう。そうですこの映画はSFです。インターステラー機動戦士ガンダム00-A wakening of the Trailblazer-で更には社長による社長のための一人マッドマックスです。そんな感じで一人だけキング・オブ・プリズムを越える速度と物量をもって駆け抜ける海馬瀬人。とにかく普通の登場の仕方をまったくしない。出てくるたびに必ず観客がざわついていたし、何かしらの笑いの声が聴こえてくる。その笑いはたぶん馬鹿にしたような笑いではなくて、如何様な感情にも還元できない圧倒的なシロモノを直視した人間がなんとかそれを処理しようとするときに出てくるアレだ。あと社長、結構な頻度で法に触れるけどそれはもう社長だからしょうがない。嫌なら童実野町に住むんじゃないよ。

 

 スタッフにも大注目で、高橋和希先生が脚本もコンテも原画もやっている。全体的に物凄くこだわっているようで、細かい原作の要素を拾ったり、「え、その人がそういう関わり方してくるの」という部分もあったりしてとにかく純度が高く精巧な原作『遊戯王』の続編なのだ。あとなんか知らないけどアゴのやつも拾ってた。更にはアニメシリーズで伝説的な美麗作画を連発した加々美高浩さんがキャラクターデザイン・総作画監督なのでキャラクターたちは常に最高の一瞬だ。妙に艶めかしい遊戯。神々しすぎるファラオ。杏子のふともも。社長の腹筋。社長の目つき。社長のドロー。社長のトラップカード発動。社長のブルーアイズ召喚。一体観客は何回ブルーアイズ系のバーストストリーム的なやつを浴びたんでしょうか。たぶん両手じゃ数えきれません。津田健次郎さん本当にお疲れ様です。

 

 言葉が全然追い付いていないけど、この映画が信じられないものを見せてくれる映画だということは間違いない。試写会によく行っている先輩が「試写でこんなに拍手が起きるのはあんまり見たことない」というくらいの拍手が自然に起こっていた。

 

 もういないはずの「あの人」の扱い方にはみんな唸ると思うし、エンドロールでみんなちょっと泣いてしまうと思う。

  あととにかく応援上映したくなる。社長の一言一言に「そうだそうだ!」って言いたくなる。

 

(追記)

 海馬社長が劇中で息をするように散財していくのだけどそのお金はあますことなくスクリーンに反映されているので観ている観客はひたすら札束でブン殴られているような気持ちになる金銭的バイオレンスアニメーションが130分間続くというのが『遊戯王 THE DARKSIDE OF DIMENSIONS』です。

 心を豊かにしろ。人のブルーアイズを盗むな。