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未確認で進行形で備忘録

映画とかアニメとかについて書きます 連絡先⇒ twdkr529@yahoo.co.jp

最近見た映画、あと朝吹真理子朗読会


映画『蜃気楼の舟』予告編

『蜃気楼の舟』

ホームレスに住居を与えるかわりに生活保護費を巻き上げる「囲い屋」の青年を主人公とした映画。

主人公は搾取する対象であるホームレスのなかにかつて失踪した父親を見つける。その父親を演じるのがダンサー・舞踏家の田中泯。背中を曲げて地面ばかり見ているようなホームレスたちのなかで、脳天から踵まで鉄棒に貫かれているような姿勢の田中泯。終盤のシーンで砂浜の急坂を降りるときも、田中の背中はその延長線上に地核があるとわかるような真っ直ぐさ。誰も搾取せず、誰からも搾取されない、経済を旨とする社会に存在していないようでしかし異様な存在感を放つこの役を演じるのは、浮遊する霊体のように踊りながらそう在るために必要な筋骨の存在を強烈に意識させるというパラドックスを秘めた肉体を持つ田中泯でなければならない。

あと「囲い屋」を演じるいわゆる「DQN」な若者達の言葉や行為の渇いた暴力性が、モノクロとカラーを往復する不思議な映像世界に合っていたのが面白かった。

 

『同級生』

BL漫画原作のアニメ映画。エロいし凄いし最高。男子校出身者としては合唱練習のシーンのやる気のない低音ボイスが教室に響くところで辛い日々を思い出して、辛い。でも全体的にとても良かった。

 

『SYNCHRONIZER』

シネ砦の試写会プレゼントに当選して見に行った映画。万田監督の映画は見た事がなかったけど滅茶苦茶面白かった。動物や他人と脳をシンクロナイズさせたらどうなるかというSF的な発想から、段々と映像でしか出来ない仕方でタブーへ踏み込んでいく。その手並みが圧倒的。

おまけで付いてきた制作中のドキュメンタリー映像も楽しかった。本読みやリハーサルで監督は俳優の全身を映画のためにビッシビシに調教するわけだけど、それは「締め付ける」調教ではなくその人に元々あるものを「引き出す」調教なんだな、と納得。

 

『X-ミッション』

予告が滅茶苦茶おもしろそうでかなり期待して見に行った。

元エクストリームYouTuberのFBI捜査官見習いがクレイジーネイチャージモン集団に潜入し何やかんやあったのちに自然と一体になる。

目覚めよ。

 

朝吹真理子朗読会』

表参道の「本の場所」というスペースで行われた朝吹真理子さんの朗読会。左に木仏、右に山水画、背には武者絵というかなりの古美術空間で、水の注がれた金のお椀を持った朝吹真理子が朗読する。読まれたのは新潮で連載中の『TIMELESS』と芥川賞受賞の『きことわ』、そして朝吹さんが好きな本の一節。色々なるほど~ということはあったのだけど、一つは朗読でわかる「文体」のこと。朝吹さんの小説には所々古語っぽい言い回しがあってそれは例えば「USBメモリ」というような現代的な言葉と並べ置かれる。それが全くわざとらしくなく、むしろ流れるように読めてしまう。『TIMELESS』には「泥(なず)んだ」とか「降りおつ」というような今は頻繁には使われない動詞や活用がある。書いたテキストは必ず自分で声に出して韻律を調整するという朝吹さん自身の朗読で聴くと、そんな言い回しに確固とした必然性があるとハッキリわかる。文体を作るっていうのはそういう自分だけの必然性を作ることなんだなぁ、という納得があった。